もう一度繰り返せば、その声が自分でも震えているのがわかって、

握りしめている指先が冷たすぎて、そろそろ感覚をなくしそうなのに、それでもわたしはそこに力を入れていた。




俯かないように先輩のほうだけを見ていた。

上を見上げれば何とも言えない顔をした先輩がいて、溢れそうな涙は目にぐっと力を入れてごまかした。



自分から想いを伝えるのは初めてで、こんな言い方で伝わるのかなんてわからないけど、それでもセンパイの表情をいま変えているのは、わたしだ。




「…朱莉ちゃん、」

「代わりでもいいです、彼女に未練たらたらでもいいです、ヘルメットだって別にそのまま取っておけばいいし、元カノの話をするたびにそういう顔したっていいですよ、」




先輩が情けなくても、

別に、泣いてもいい。


むしろ、ひとりでそんな顔をするくらいなら、わたしの隣にいてほしいって思うんです。




「…ありがとう、」


先輩の口がゆっくりと動く。

わたしはそこから逸らさずに、先輩の言葉全部、ちゃんと逃さないようにしようと思った。




「…もっと、自分を大切にしなきゃだめだよ」