「──ここら辺?」
「あ、もうここでいいです」
家の近くの公園で止まって、腰に回していた腕を解いた。
30分くらい。
駅のほうにバイクを走らせてそれから、大通りをグルって回って遠回り。
バイクから見る世界は、いつも見ている景色のはずなのに、なぜか特別だった。
あっという間だったけれど、それでも、十分に楽しかった。
バイクから降りれば、先輩も一緒に降りるから、不思議にお思って顔をあげれば、かぶっていたヘルメットをゆっくりとはずされた。
「わ、」
「あーあ、髪の毛ぼさぼさ」
バイトのために後ろでくくられたポニーテールはヘルメットが外れると同時にゴムが緩められてしまった。
「まあ、もう帰るだけなんで大丈夫です」
「そっか」
髪ゴムを外し適当に結び直す私をじっと見つめて、それからヘルメットを元の場所にしまい込んだ。
「隼人せんぱい、」
「うん?」
「わたしじゃダメでしょうか」
背を向けていた先輩にその言葉を落とせば、一度止まった後、わたしのほうにゆっくりと振り返った。
「わたしじゃ、ダメですか」