「これ、どうやってつけるんですか」
「反対だよそれ」
わたしの手からヘルメットを取り上げて、向きを反対にしてからそれを無理やり頭に押し込んだ。
「いて、」
「朱莉ちゃん、ヘルメットもかぶれないの」
「…いつもの調子に戻ってきましたね、」
ヘラって笑ったセンパイにそう言えば、目をぱちくりと瞬きさせて、それから私に背を向けた。
「…なんか、今日の朱莉ちゃんは調子狂う」
「それで、いいです」
わたしの精一杯。
好きって言わせてくれない先輩のこと、慰めたいって思うんです。
はやく、吹っ切って。
…それからついでに、わたしのほうを見て。
「朱莉ちゃんち、駅の反対側だよね」
「そうです、…でも、」
「ん?」
「遠回りしてください」
キーを回せば、ブルルとエンジン音が鳴って、わたしの目の前に座る先輩が顔だけ振り向いてから「ちゃんと掴まってて」って言う。
先輩の腰にぎこちなく腕を回す。
心臓の音が先輩に聞こえてしまいそうで、もっとエンジンの音が大きくなってしまえばいいのにって思った。
「いくよ、」