「すずちゃんの好きなところは、」
「わかんない、けど全部好きだとおもう」
「浮気やめなよって、言わないの」
「言えないだろ、本気なんだから向こうも」
いつも同じ答えだ。
それを言っている自覚も、もはやあるのかわからない。
それから立ち上がって冷蔵庫から二つ目の缶を持ってきて、プルタブをかち、と鳴らした。
♪~~
へたくそなメロディが、二人だけの部屋に響く。
それは紛れもないわたしが作ったうたで、これもいつもの、流れだ。
へたくそな前奏、私のギターの音色をまねした高い音、瞼を閉じて気持ちよさそうに奏でる。
でもなぜかその音色が恋しくて、心地がいいと思ってしまう私も、もう、ダメなんだと思う。
ほんとう、無防備な男だ。
「みやー」
伸びた声で私を呼ぶ。
へんてこなあだ名で私を呼ぶ。
ギターを弾けるのがかっこいいと、初めて私の部屋に訪れた日に目を輝かせていた。
そうして、そのまま、いうのだ。
「きょうも、うたって」