今日も、誰もが、重ならなかった。
テーブルの上で少しだけつぶれた缶ビールがこっちを見ていた。
お酒のせいにして一歩踏み出してしまえば、と何度考えたことがあるのだろう。
3つの缶を開けたあと、気持ちよさそうにベッドの下で眠るきみに何度触れてしまいたくなっただろう。
無防備なのは、無関心だからだ。
安心しきっているのは、大切のかたちがお揃いではないからだ。
誰もいなくなった部屋で、ギターだけは今日も、私の味方をしている。
リキに出会うまで、恋なんてばかばかしいとうたっていた。
大した恋愛の数をこなさないまま、キラキラしている恋心なんてちっともわかりやしなくて。
ありふれたラブソングを、誰かの話を聞いて作っていた。
友達が失恋して、泣いている、その子の気持ちを一生懸命に感じて、無理やり苦しんでいた。
共感できないフレーズに誰かが共感したところで、それは本当に自分が作ったのかわからなくなる。
私がつくるラブソングは、誰のものでもない偽物だった。
それなのに。
真剣になるほど自制が利かなくなる、本気になるほどしんどくなる。
恋は誰にも治せない病気だと、誰かが言っていた。
リキのせいで、わかるんだ。