くっ、先を越された……。
「あ、あの」
 僕は悔しくてつい、彼女を呼び止めてしまった。
「はい?」
「僕、まだちゃんと名前言ってなかったなと思って」
「……あ、そういえば。そうでしたね」
「僕は、神城エディ」
「私は、山口若葉です。よろしく、お願いします」
 よろしく、なんて言われたら。
 君との未来に期待してしまうじゃないか。
 ああ。心臓がうるさいくらいに鳴っているのがわかる。
 ため息が出るほどの素敵な時間。
 これが、君と僕の時間(こい)の始まりならば、どんなに幸せだろう。