『あ』
 お互い顔を見合わせた。

「君は……」
「こ、こんにちは」
 彼女だ。
 まさか、こんなところで出会うとは。
 シチュエーション的にはありだが、同じ空間にオカマが二人もいると思うとそればかりは心残りだ。非常に残念極まりない。
僕までそのケがあると思われてしまっては元も子もない。それだけは絶対に違うと予防線を張っておかねば。
「……まいったな。恥ずかしいところ見られちゃった」
「いえ、そんなことは。素敵なお店ですよね、ここ」
「よく来るの?」
「最近見つけたんです。大学が近くなので、お昼休みか講義終わりに立ち寄るようになって」
「そうなんだ。僕も学校帰りによくここでバイトしてるんだけど、今まで全然気づかなかったよ」