ここに来る度に、ここから飛び降りたらどうなるんだろう。と考える。みんなは喜ぶ?悲しむ?憐れむ?
実にくだらない。どうでも良い。なのに考えて仕舞うのかなんて永遠の謎だ。
このまま私という存在が消えて仕舞えばいいのに。考えながら溜息をつく。
溜息をつくと幸せが逃げるというけれど、結局あんなの迷信。けれど、信じている人と信じていない人で口論が起きる事がある。本当にめんどくさい。
最終的に価値観の違いが生じるから無意味なのに。
今日もまた謎が増えた。永久に解けない謎が。
いつかは解けるかも知れない。なんて淡い期待するだけ無駄なんだから捨てれば良い。

"いつか"なんて一生来ないんだから。

帰る場所も荷物も無い。これからどうしようと考えながら、私は廃ビルを後にした。


それにしてもどうしようか。
廃ビルの出口で考える。
荷物は学校で有り、自由の無い私の家は隣に莉斗の家が有る。
さっき絶対に泣き顔見られたし、まずあいつと顔を合わせたくもない。今の時刻は5時半前。
……走って帰ればギリギリあいつが帰ってくる前に家につく時間だ。迷っていても時間が減って行くばかり。私は走って帰る決心をした。
ちなみに私の足の速度は普通。速くも遅くも無い。だから鉢合わせる可能性も充分に有る。
それでも帰りたい理由は寒いからだった。

____10分後。

暫く立ち、家が見えて来た。

私が鍵を見つけ、顔を上げるとそこには莉斗が居た。私は極力こいつと関わりたく無い。
こいつの瞳には、全て見透かして居る様で、あの綺麗な瞳に何が映っているのかが分からなくて、頭がグルグルする。そして、同仕様に無く泣きたくなるんだ。
昔はこんな風じゃ無かったのに……全部全部。莉斗のせいだ。私は知っている。ただ莉斗にあたってるだけって事を。
こんな事、顔には出ない様に無理矢理笑顔を作った。全てを誤魔化す様に。
でも、莉斗は、私が必死に作った壁を崩す様に、私に現実を突き付けるんだ。

「……泣きたいなら泣けよ。そんな気持ち悪い作り笑いなんてしないで。」

この一言に、私の心のストッパーが"ぷつんっ"と音を立てた様に切れた。

「さっきは誓い。今は泣きたいなら泣け。何も知らないのに無責任な事言わないでよ。」

私は、自身を嘲笑う様に言った。自分で言っていても馬鹿らしいと思う。ほとんど八つ当たりの様な事を何も説明してない奴にした。最低だ。

「いい加減自分が悲劇のヒロインだと思い込むの辞めろよ。いつまでも過去を引きずってんじゃねぇよ。自分だけ知ってる様な言い方しやがって。お前こそ知らねぇだろ。」

私が反抗しようとすると莉斗は言った。

「わかるよ。過去を引きずっちまうのは。でもお前は違う。現実を受け入れるんじゃ無くて逃げてんだよ。無責任?そんな訳が無い。責任が取れるかって言ったら取れないかも知れない。でも、無責任な訳じゃ無い。自分の言葉にはお前よりは責任を持ってる。」

反抗しようにも何もかもが莉斗の言う通りで何も言い返す事が出来なかった。

長い間2人に沈黙が流れる________。