気づいて見れば、既に23時を回っていて私は眠りについた。

本は明日見て調べればいい。
こんな考えはすぐに打ち砕かれる。何故ならここは魔法使いと言われていた祖母の家。
私が目覚めた時そこはもう昨日私がいた祖母の家では無い。

私の知らない幻想的な場所だった。
そこは空と地の境界線がなく、水の上に立っているような感覚で不思議な場所だった。

そこに一筋の彗星が走る。
それはとても綺麗で、いつかの約束(・・)を思い出した。

       ✻    ✼    ✻

「約束と言う名の誓いを立てよう。」

今は失われた高く澄んだ声。

「うーん。よくわからないけどぉいいよぉ!」

少しぶりっ子している可愛い声。

「いいよぉ。今日は天気も良いしね。」

今も残っている綺麗な高い声。

この日はクローバーが嫌と言う程映える晴天だった。
この日私達3人は誓いを立てた。

澄んだ声の彼が言う。
ーこの中の誰かが欠けたとしても、必ずここに帰って来て笑い合う事をラナンキュラスに誓うー

可愛い声の彼女が言う。
ー仲違いが起きたとしても信じ合い、手を取り合って絆を深める事をモミジアオイに誓うー

綺麗な声の彼女が言う。
ー何が起こってもこの場所では本来の自分自身で悲しみや歓びを分かち合う事をシンビジウムに誓うー

彼ら3人が言う。
ーこれらを持って我らの誓いとするー

「これで誓い完了!!__簡単だったでしょ?」 

彼は__に尋ねる。


「確かに簡単だったぁ!」

__は彼に応える。


「この誓いは、クローバーへの誓いでいーの?」

__は彼に尋ねる。


「そうだねっ!これは、クローバーへの誓いだっ!クローバーを見たら思い出そーねっ!」

彼は応える。__は儚く、けれど綺麗に笑う。

これは今は失われし尊き昔の話。

この話は何光年、何億光年の一筋の彗星が運び、現代へと蘇る。

       ✻    ✼    ✻

あぁ。私にもこんな時期があったんだ。純粋で、尊き思い出。
長らく忘れていた気がする。花の誓い自体しか覚えていなくて、こんな会話があって、それでいて過程があった事も忘れていた。

私の頬には暖かい涙が伝う。
とても暖かい、温もりのある優しい涙。
私は涙を流している事に気づかなかったが、心が暖かくなった。

私が暫くぼーっとしていると、50メートル程前に綺麗な紫色の水晶が現れた。

水晶の前まで行き、自然と水晶に触れると辺りの景色は急に消え、真っ黒な場所へと変化した。
先程までは水の上に立っているような不思議な感覚だったが、その水の様な物は消え、私は立つことが難しくなった。

そして私は、ゆっくり、ゆっくりと海の底へ行く様に沈んで行った。その時私は、水晶へ手を伸ばしながら沈んで行った。
不思議とそこは本当に海の様になっていてだんだんと私は息苦しくなった。
息苦しくなった直後私はゆっくりと瞳を閉じた。