何をしても、寝れば夢に今起きている様に蘇り、寝る事なんて不可能で、ずっとずっと体調が悪い日が続いていた。

そんな時、親の転勤が決まりこの地を去った。

この地には私の支えとなっていた莉斗がいる。
でも……この地をされば姉との思い出がなくなる。
そうなれば私は、浅いかもしれないが仮眠位は取れるかも知れない。

そんなこんな色々な事を考えていたが、私に選択肢など無かった。
全ては親の一存で、私の意見など通る筈も無く、私は別れの言葉も言えずにこの地を去った。

結果的に私が莉斗を見捨てた。という事になったが私は莉斗の事を忘れた事なんて無かった。

いつも頭に浮かぶのは莉斗だけ。
たまに姉の事も思い浮かぶが、莉斗に押しつぶされていた。

朝起きれば、親からの暴力、暴言。そして、家事。当然私の分のご飯など無かった。

こんな生活を続けて1年近く立った時、私はもう限界だった。
そしてついに私は最終手段をとった。

「やめて、お母さん。私はあの出来損ないの結香じゃ無い。深月だよ!」

「……!?ごめんなさい。勘違いしていたわ。」

一卵性と言う事を逆手に取って私は姉の振りをした。

私と姉は似ていなかったが、姉の死に立ち直れていない両親は姉だと勘違いをした。

そこから暴力、暴言は無くなったが"愛"を貰える事は無かった。

        ✻    ✻    ✻

今考えれば酷い事なのかも知れない。
それでも、死なないで一生懸命、地に這いつくばる様に生きた時は無駄では無かったのかも知れないとも思う。

心に傷は残るけれど、確かに愛されていた時はあって、私が姉を傷つけた事実もある。
そう考えると、自業自得な気もする。

「きっとこんな事人に言ったって貴方は悪く無いって言って姉の事を悪く言うと思う。
………きっと莉斗もそう思うかも知れない。でも、莉斗だから告白した。」

そして私は小さく微笑んだ。

「……ありがとう。俺に告白してくれて。」

私は小さく首を横に振った。

私はずるい。
莉斗は包み隠さず全て告白してくれたのに私はまだ全て告白をしていない。

私はもう半年もこの世に入れるかわからないのだから。

ごめんね。莉斗。
私はまた君から離れるよ。
でも、私はずっとキミの事が好きだから。

君はとても優しいからこの世から消える事を言ったら嘆いて、消えない方法を調べ、考えるだろう。
それはだめ。
私の事でキミが傷つく事だけは避けたいから。
私の記憶が薄れる(・・・)様に私はキミから離れるよ。

その為に『花の誓い』の事を口に出さなかった。

普通より少し早いかも知れないけれど、もうお別れ。
さようなら莉斗______。