夕日が輝く時刻。

私は呪いの誓いの場所へ足を運んだ。
そこはいつもと変わらず綺麗に生き生きとした一面に広がる花達が先程降った天気雨で濡れていて、悠々と風に身を任せ揺れていた。

「久し振りだなぁ。」

ここは誰も来ない為、好きなだけ好きな事をいつまでもしている事が出来る。

それにしても、誰にも世話をされて居ない筈なのにどうしてここの花は元気に育っているんだろうな。

葉に乗っている雨粒に夕日が当たり、輝く。
まるで宝石の様にキラキラと輝いていた。

私が死んだら誰かがここに埋めてくれると嬉しいけど。
世の中そんな甘くないか。

今日は帰らなくて良いや。
ここで宝石の花畑をスケッチしよう。
いつか見た時に"綺麗だな"と思える様に気持ちを込めて。

誰かが来る気配がする。
でも、私は驚きはしなかった。ここに来る人は限られているからだ。

「やぁ。久し振り。また行き倒れ?」

「んな訳無いでしょ。まぁ久し振り。」

この香りは色葉だ。
変わらず海の香りがする。

「まだ消えたいの?」

「んー。別に。もう全部がどうでも良くなったんだよね。
私がいたっていなくたって世界はまわるし。」

「随分大人な考えをする様になった事。まぁ、もう消える未来は変えられないけれど。」

ふふっと笑う色葉は昔より少しだけ大人っぽく見えた。

「それにしても"ここ"良い所だね。心が安らぐ
。」


「でしょ。というか、なんであの日私の前から消えたの?」

少し自慢げに返事をして1番気になっていた事を聴くと、色葉は眉を少し顰め困った顔をした。

「……そんな昔の事を良く覚えているね。
私は………忘れかけてたよ。」

色葉は今嘘をついた。
子供の時から人の顔色や動き、癖等を見て生きてきた私には人の嘘がわかる。

「それ嘘でしょ。私を見縊らないでね。」

「見縊ったつもりは無かったけれど、なんかごめん。
その事については話せないんだ。」

「そう。」

今の言葉は嘘をついていなかった。
けど、悲しそうな切なそうな彼女の横顔を見て私は何も声をかける事が出来なかった。

無言の空間が広がる中、私はひたすらに花畑をスケッチしていた。

「そろそろ帰ろうかな。」

そう色葉が言ったのはとっくに日は暮れ、月と星が夜の空に最も輝いている時刻だった。

「帰る場所とか有るんだ。」

「一応普通の女子大生の振りをしているからね。
まぁ、家に誰もいないけど。」

「じゃあ、もう少しだけここにいたら?」

と提案すると色葉は微笑み、そうする。と言った。

色葉と私は可能な限り一緒にいて、気づいたらもう2週間も過ぎていた。

「色葉。またここでキャンプとかトランプとか色々沢山しようね!」

「うん!じゃあまたね。ばいばい。」

「ばいばい。また今度。」

色葉と別れた後、静寂が訪れた。
人と別れた後って寂しいものだな。
なんて呑気に考えながら花畑の色塗りを始めた。