『__が死んだ事なんて私は信じない!』
なんて、いつかのドラマで言っていた事。
俺は、何言ってんだ。起こってる事が事実なんだから信じる信じないの話じゃないだろ。馬鹿みたい。って簡単に考えてた。
でも、実際に起きてみたらこうだ。死んだ訳では無いけれど、君が倒れた事なんて俺は信じたく無い。
それも、俺の言った言葉のせいかも知れないなんて、どこかの誰かさんと同じじゃ無いか。
今になって君の気持ちが分かったよ。
俺の行動が、俺の言葉がどれ程無責任だったかが。
今更理解した所でもう遅い。もう意味が無い。
"過去を引きずるな"なんて無理な話だ。
「ごめん。」
もう届く事の無いかも知れない言葉。まだ伝える事は出来るかな。
これ位期待しても良いよね。どうか伝える事の出来ます様に。
君が瞳を開かなくなってもう3日___。
いつになったら君はその繊細で綺麗な深みのある海の様な藍色と澄んでいて透明感のある青空の様な綺麗なオッドアイの瞳を開いてくれる?
やっと再会出来たと思ったのに。君はまた、俺から離れて行く。幾ら、俺が君に謝りたくとも。君へ届かないよ。
ねぇ。いつになったら君はまた昔みたいに笑いかけてくれる……?
どれだけ過去を悔やんだら、未来へ足を進める事が出来る?
俺はもう、後悔で押しつぶされそうで怖い。君はいつもこんな思いをしていたんだね。
俺は、朝の挨拶の騒がしさが「嫌いだ。」何も知らないのに呑気に喋っている姿がそこら中に見えるから。ほとんど八つ当たりみたいなものだけどな。
「はぁ…」
きっと俺は今日も無意識な内に君の病室へ行って、「ごめん」と呟くよ。君が望んでいなくとも。
君がその綺麗な瞳を開いてくれるならば俺は、過去の事、俺の心の内の事、全て告白する。これで俺の罪が消える訳では無いし、清算する気も無い。
ただ、今まで出来なかった分君に尽くしたいんだ。君の為になるんだったら何でも、少しでも俺はやるよ。
元々、君と再会したら全て告白するつもりだったんだ。でも、俺は意気地なしだから君を目の前にすると全て告白なんてむりだった。
だから次は必ず、必ず全て告白するから。
早く綺麗な瞳で微笑んで見せて……?
俺は君へ見舞いのサクラソウを贈る。
今日は天気が悪い。ねぇ。明日は晴れますか?と無機質な病室に呟く。
それは、無かったかの様に空気に馴染んで消えてしまった。
君が瞳を開かなくなってから2週間。
もう君は綺麗な瞳を開く事が無いんじゃないか。なんて思う程に深く眠っている。
君がいない学校はとても退屈で行きたくなかった。
君の教室を通りすがらに見ると、君がいない事に心配しているのは、新木音羽さんと七瀬けいとさんしかいなかった。
他の人はまるで君なんていなかった様に、先生でさえも君の存在を覚えてはいなかった。
覚えていない振りをしている可能性もあるが、そんな事する必要は無いと思う。
唯一気掛かりだとするならば、何故新木さんと七瀬さんだけ覚えているのか。というか事だけだ。
そんなの考えた所で君は瞳を開かないんでしょ?
いつになったら君は瞳を開いてくれるのかなぁ。
学校でも家でも君の事しか考えられない。
色褪せていた景色を再び色付けてくれたのは君だった。
でも、色褪せた原因も君だった。
だから、また俺の景色を色付けて?
いつになったら俺のクフェアは散るのかな。
いつまで俺はクフェアを咲かし続ければいいの?
何をしても瞳を開かない君に俺は毎日の様に言葉をかけ、花を変える。
そろそろ選ぶ花の種類が無くなりそうだよ。
そんな事思っても意味無いだろうけど。
俺はいつまでも君を想い続けるから、早く瞳を開いて?
何をしても、何想っても瞳を開かない君を待つのは正直苦痛なんだ。
何を見ても感情は動かないし、何をしても君に関連づく。
そんな毎日は退屈で、心は死んでいる。
こんな毎日を過ごすなら死んで仕舞いたいと何回も思った。
それでも死にきれなかったのは、きっともう1度、君の花が咲く様な笑顔を見たかったからなのかも知れない。
きっと丁度2週間後の天気は晴れだから。
その時に、君の笑顔が見える様に俺は頑張りたいんだ。
だから、結香は最高の笑顔を俺に見せてね。
「それじゃあ。また明日来るね。」
『もう全てがどうでも良くなったんだよね。別に私がいたっていなくたって世界はまわるし。』
イベリスの真実
ここは……どこだろうか。
何も無い、真っ白なセカイ。でも、どこか見覚えの有るセカイ。
私は以前もここに来た……?
来た事の無い筈のセカイ。
どこか安心感の有るセカイ。
そこには何がある…?
そっと手を伸ばせば、何も無かった場所に"何か"が現れる。
それは、私が2度と見たくの無い景色。
あぁ……もしも過去を変える事の出来たなら。君は私に振り向いてくれましたか…?
愚問だ。
君の瞳には深月しか映っていないのだから。
先に告白してれば良かったのかな。考えたって仕方が無いのに私はいつも考える。
深月は自殺した。
それだけが私にのしかかった事実だった。
目の前に映る深月の飛び降りる寸前の景色。
飛び降りた理由は、私が深月に「消えれば良いのに」と言ったから。
だからなのかは知らないけれど、深月は私の目の前で飛び降りた。
そこから私はずっと罪悪感と後悔に苛まれている。
当然と言ったら当然の罪なのだけれど、認めたく無い私が居る。
私が見たく無い。と今の景色に背を向けたなら、向けた先にはイベリスの花畑が現れる。
ここは、私を責めるセカイなのか。
もう許してよ。
私は、深月が好きになる前から君が好きだった。
でも君は深月が好きだった。
もう嫌だ。
もう1度過去に戻れるのなら、私は君へ恋をしない。
まぁきっと無理だけれど。
運命から結局抗え無かったからここに居る。
もうイベリスも見たく無い。そうして背を向けると、向けた先には何も無かった。
ただ真っ白なセカイが続いているだけで、何も無かった。
暫くすると、急に身体が浮遊した。
身体が浮いていて、楽しくてうろうろしたら2つの違和感に気付いた。
1つ、ここには出口が無いのだ。真っ白なセカイで、地平線と呼べるものさえ無い。
左右、方角、上下、全てわからない。
2つ、身体が浮く事に何も抵抗が無い事だ。普通、運動もバランス感覚も良い訳では無い女子高校生がバランスを崩さず浮遊する事なんて出来るだろうか。
少し物音がして、今の場所からの下を向けば全く身に覚えの無い景色が広がっていた。
ドンッ
鈍い音が響く。
目の前には、事故の景色。
どういう事だろうか。
事故に遭ったのは深月である。私の目の前で自殺した、深月。
どうして……?
深月が命を落としたのは自殺の筈。なのに、どうして事故で命を落としているの?
ここはきっと私の記憶のセカイ。
だから嫌な深月が自殺した景色が蘇っている。
なのに…全く見に覚えの無い景色が広がっているのは何故?
ここは、私を責めるセカイ。=私の記憶のセカイ。
私の記憶は私を責めるから。
でも、私は知らない。深月が事故に遭うなんて事実を。
ドンッガンッと、また鈍い音が響く。
そこに瞳をやると、昔の私がいた。
「辞めて!私を責めても深月は帰ってこない!」
「うるさい!あんたが深月を殺したのに!」
そうだ。私は深月を殺した。
私の言葉で、深月は死んだ。
だから私は、親に何をされても言い返せなかった。
でも、私は弱いから。自分を保護する為に、一卵性の双子という特性を活かして、深月の振りをした。
だから……
「辞めて!私は結香じゃないよ!深月だよ!」
「!!……ごめんなさい。結香だと勘違いしてしまった。」
私は今も結香では無く、深月として過ごしている。
こんな醜い私を誰が愛してくれるんだろう。
今だったら違う選択を……嫌、今でも同じ選択をとった。
私が深月を殺したのに、親を悪者にする権利なんて無いからね。
もうやだな。このセカイ。
私の精神だけが壊れていく。
もう死んでしまいたい。誰にも気づかれずに。
親にも見放されて、好きな人も悲しませて、私に生きている価値なんてあるのだろうか。
そんな私が、『愛されたい』なんて思うのはきっとおこがましい事なのだろう。
そんな事を考えていたら身体が光に包まれた。
光に包まれ、今までの記憶が目の前にめぐる。
とても不思議な感覚だけれども、嫌な記憶ばかりが巡っていて気持ち悪くなる。
その中でも、私の瞳に止まったのはある1つの記憶だった。
✻ ✻ ✻
雨音が響く__。
雨が酷い中、少女は傘もささずに歩いていた。
そんな中、彼女の入った場所は廃ビルだった。
少女はそこで行き倒れている1人の大学生程の女性に会った。
少女は女性を看病した。
女性は体調が良くなり、少女に話し掛けた。
その女性は、"色葉"と名乗り、自分は魔女である。と言った。
そして……看病してくれたお礼になんでも1つ願いを叶えたい。でも…ここで起きた事は口外しない事を約束に。とも言った。
少女はこの言葉を信じていた訳ではないが、口外しない事を約束し、1つ願いを口からこぼした。
「誰にも気づかれずに泡のように消えてしまいたい」
と。その言葉に色葉は絶句した。
だが、
「どうしてもと言うのなら、貴方は私の恩人ですしね。」
といい、何かを唱えたと思うと、そこにはもう誰もいなかった。
少女が気づかない内に色葉は言った。
「彼女に幸せが訪れます様に。」
と、涙をこぼしながら____。
✻ ✻ ✻
どうしてこんな大切な事忘れていたんだろうか。
色葉。私の大切な友達。
私の数少ない親友なのに、なんで忘れてしまっていたのだろう。
思い出せて良かったと心の底から思った。
色葉の冬に見合わないあの向日葵の様な笑顔は絶対に忘れたくない。
色葉のお陰で生きているんだから。
色葉のお陰で消えられるんだから。
ずっと、死ぬまで感謝しないと。
これが私に出来る唯一の事だから。
また、身体が光に包まれると、元の記憶のセカイに戻って来ていた。
でも、何も無い訳ではなくまるで導かれているかの様に優しい光の道が出来ていた。
…………もう、目覚める時間か。
どれ位このセカイに居たんだろう。
私はゆっくりと、そして確実に光の道を歩いて目覚めという名の出口へ向かっていた。
出口はもう目の前。
もう少しここに居たかった気もするけれど、やらなければならない事が有る。
だから……私は目覚めなきゃ。
そう決意した時、私の意識は記憶のセカイにはいなかった。
「……ごめん。」
そんな彼の声が聞こえた気がして私は瞳を開いた。
あぁ。帰ってきたんだ。
心から安堵した。けど、その分不安があった。このセカイでは許されない事をしたから。
というか、彼の声が聞こえた気がして目覚めたとかやばいな。
だいぶ彼に溺れてる。こんな所に彼がいる訳が無いのに。
「結香…?」
私の名前を呼ぶ声がして、起き上がってみればそこには彼の姿があった。
私は驚きで固まった。
本当に彼がいるとは思わなかったから。
「起き…て、くれて…良かったぁ」
彼は泣きながら言った。
何故彼がここまで泣いているのだろう。
どうしようか分からないのと、驚きであたふたしていたら彼が言った。
「いっ、1ヶ月も、目を…覚まさな…いから心配、したぁ」
そんなにも私は記憶のセカイにいたのか。
そう思うと寝過ぎちゃったなぁっと思考が呑気になって気がついたら彼の頭を撫でていた。
その行動に驚きもしたけれど、ずっと彼が落ち着くまで頭を撫でていた。
彼が落ち着いて、初めて彼に問いた。
「どうして私の病室にいるの…?」
「謝りたくて。俺の言葉が無責任だったから。」
そう。と短く返事をして私は帰宅を促した。
彼に気づかれずに退院出来る様に手続きを済ませてしまいたいから。
「あぁ。そうだね。また明日」
「うん。また明日。」
それにしても酷いものだ。また"明日"なんて来ないのに。
さて、退院手続きを済ませに行こうか。
親の承諾なんてどうやってとったのだろうか。
………………大人の裏事情と言う事で黙っておこう。
✻ ✻ ✻
面倒くさい手続きやらは終わった。
明日の朝にはここを出て良いらしい。
荷物なんて無いからこのまま出て仕舞おう。
私の中では短い間だったが、長い間お世話になりました。と病室や看護師さんにお辞儀をして家へ帰った。
✻ ✻ ✼
帰った家には何も無い無機質な空間がある。
実家な筈なのにあの人達は帰って来もしないし、荷物も無いからだだっ広い無機質な空間だけが広がっている。
幼少期からの事だったから、「ただいま。」なんて言う事は無かった。
言った所で相手にされるのは双子の姉の深月だけ。
もうヤダな。
今日はとことんネガティブな日だ。
さっさと寝て仕舞おう。
明日は何をしようか。久し振りにあの場所へ行こうか。
あの呪いの誓いの場所に___。
夕日が輝く時刻。
私は呪いの誓いの場所へ足を運んだ。
そこはいつもと変わらず綺麗に生き生きとした一面に広がる花達が先程降った天気雨で濡れていて、悠々と風に身を任せ揺れていた。
「久し振りだなぁ。」
ここは誰も来ない為、好きなだけ好きな事をいつまでもしている事が出来る。
それにしても、誰にも世話をされて居ない筈なのにどうしてここの花は元気に育っているんだろうな。
葉に乗っている雨粒に夕日が当たり、輝く。
まるで宝石の様にキラキラと輝いていた。
私が死んだら誰かがここに埋めてくれると嬉しいけど。
世の中そんな甘くないか。
今日は帰らなくて良いや。
ここで宝石の花畑をスケッチしよう。
いつか見た時に"綺麗だな"と思える様に気持ちを込めて。
誰かが来る気配がする。
でも、私は驚きはしなかった。ここに来る人は限られているからだ。
「やぁ。久し振り。また行き倒れ?」
「んな訳無いでしょ。まぁ久し振り。」
この香りは色葉だ。
変わらず海の香りがする。
「まだ消えたいの?」
「んー。別に。もう全部がどうでも良くなったんだよね。
私がいたっていなくたって世界はまわるし。」
「随分大人な考えをする様になった事。まぁ、もう消える未来は変えられないけれど。」
ふふっと笑う色葉は昔より少しだけ大人っぽく見えた。
「それにしても"ここ"良い所だね。心が安らぐ
。」
「でしょ。というか、なんであの日私の前から消えたの?」
少し自慢げに返事をして1番気になっていた事を聴くと、色葉は眉を少し顰め困った顔をした。
「……そんな昔の事を良く覚えているね。
私は………忘れかけてたよ。」
色葉は今嘘をついた。
子供の時から人の顔色や動き、癖等を見て生きてきた私には人の嘘がわかる。
「それ嘘でしょ。私を見縊らないでね。」
「見縊ったつもりは無かったけれど、なんかごめん。
その事については話せないんだ。」
「そう。」
今の言葉は嘘をついていなかった。
けど、悲しそうな切なそうな彼女の横顔を見て私は何も声をかける事が出来なかった。
無言の空間が広がる中、私はひたすらに花畑をスケッチしていた。
「そろそろ帰ろうかな。」
そう色葉が言ったのはとっくに日は暮れ、月と星が夜の空に最も輝いている時刻だった。
「帰る場所とか有るんだ。」
「一応普通の女子大生の振りをしているからね。
まぁ、家に誰もいないけど。」
「じゃあ、もう少しだけここにいたら?」
と提案すると色葉は微笑み、そうする。と言った。
色葉と私は可能な限り一緒にいて、気づいたらもう2週間も過ぎていた。
「色葉。またここでキャンプとかトランプとか色々沢山しようね!」
「うん!じゃあまたね。ばいばい。」
「ばいばい。また今度。」
色葉と別れた後、静寂が訪れた。
人と別れた後って寂しいものだな。
なんて呑気に考えながら花畑の色塗りを始めた。
中々に上手く描けた花畑。
でも……やっぱり実物の方が生き生きとしている気がする。
誰にも見せた事が無いから実際の所は分からないけれど。
これが誰かに見られる時、私は笑顔でここにいるのかな。
もし、見られる時があるのなら、笑顔でここにいたいと、私は思う。
もう、時なんて残ってないけれど。
ダメダメ。ネガティブはやめるって決めたんだ。
この日はこのまま眠りについてしまった。
気づいたらあっという間に時は過ぎていて、もう肌寒い季節。
もうすぐ冬が待っている。
綺麗な夕日は情熱的に激しく燃えているよう。
ザッ
あぁ……またか。
また誰かがここへ来た。
まぁ海の香りはしないから、あいつしかいない。
「約、1ヶ月半ぶり位かな。久し振り莉斗。」
「っ……久し振りじゃないよ!!急に俺、の前から消えて、どれだけ心配した、かと…!」
私が瞳を開いた時見たく悲しみと少しの怒りを含んだ涙を零す彼。
不覚にも、涙が夕日に照らされて光り、美しいと想ってしまった。
彼は……美しい。
私には勿体ない位に。付き合っても居ないけれど。
「ずっと探してたんだ。やっと、み、みつけた。」
とても嬉しそうにはにかむ君を忘れたく無いと、描きたいと思った。
「君に伝えたい事があるんだ。深月について。」
まだ瞳には沢山の涙が、今にも零れんばかりに溜まっていた。
それでも真っ直ぐ私を見つめる彼の瞳からは逃げられない。
「極力…その話はしたくない。」
「それは、無理だ。」
予想していた言葉。
もう聴くしか無い。
「それは、______」
真実を聴いて私は嘆いた。
もう嫌だともう消えたいとずっと、時間が許す限り泣き叫んだ。
✻華✻
スカビオサが
綺麗に咲いた日
✻ ✼ ✻
それは、ある晴天の日。
俺は、深月に呼び出された。
呼び出されたと言ってもみんなで遊ぼうというお誘いだった。
いつものメンバー(結香・深月・莉斗)だと思い、何して遊ぶのかなぁなんて思いながら、この花畑に来る前にある公園へ向かっていた。
花畑の前にある公園でいつも俺たちは遊んでいる。
ついたは良いが、集合場所の公園には深月しかいなかった。
「待たせてごめん!深月だけ?結香は?」
「大丈夫だよぉ〜。結香はぁ今日ぉ来ないのぉ。」
その一言に俺の気分は沈んだ。
何故なら俺は結香が好きだからだ。
「えっとねぇ……今日ぉ、莉斗君をぉ呼んだぁ理由はぁねぇ。」
頬を赤く染めながら言う深月。
「莉斗君がぁ、好きだからですっ!付き合ってぇ下さいっ。」
照れながらも一生懸命に俺に告白する深月。
でも俺は、ぶりっ子していて気持ち悪いと思った。
いつもはタメで、少しぶりっ子する位だから、何も思わなかった。
でも、今回は気持ち悪いと思った。何故だろうか。
「ありがとう。でも、俺は深月を"友達"として好きだから。」
友達を強調して言うと、俺は颯爽とその場を去った。
彼女は、大粒の涙を流していたが、別になんとも思わず、頭の中は結香の事で埋まっていた。
その日から結香は生気を無くし、深月は何故か吹っ切れた様に元気に明るくなり"枯れたスカビオサ"を持ち歩いた。
結香は日に日に痣が増えていった。そんな結香を俺は心配する事しか出来なかった。
そんな日が続いていたある日。
深月が俺達の目の前で車に轢かれた。
結香はショックで倒れ、この地から離れた。
そして俺は、この時にもう1つの世界に入り込んだ。
普通なら混乱すると思うが、何故か俺はすぐに理解ができた。
そこには、深月が目の前で自殺をしていた。
✻ ✻ ✻
これが俺に起きた事。
結香がこの地を去ってから、俺は結香の事しか考えられなくなった。
嫌……考えたく無かった。
深月の事を考えたって深月は帰って来ない。
だったら別に結香の事を考えたって良いだろ。
その後、もう1つの世界にはいつでも干渉や入る事が出来る様になった。
こんな不思議な能力は俺と結香ぐらいだろうし。
誰にもこの事は告白しなかった。