イベリスの真実



ここは……どこだろうか。
何も無い、真っ白なセカイ。でも、どこか見覚えの有るセカイ。
私は以前もここに来た……?

来た事の無い筈のセカイ。
どこか安心感の有るセカイ。

そこには何がある…?

そっと手を伸ばせば、何も無かった場所に"何か"が現れる。

それは、私が2度と見たくの無い景色。

あぁ……もしも過去を変える事の出来たなら。君は私に振り向いてくれましたか…?

愚問だ。
君の瞳には深月(・・)しか映っていないのだから。

先に告白してれば良かったのかな。考えたって仕方が無いのに私はいつも考える。

深月は自殺した。

それだけが私にのしかかった事実だった。

目の前に映る深月の飛び降りる寸前の景色。

飛び降りた理由は、私が深月に「消えれば良いのに」と言ったから。

だからなのかは知らないけれど、深月は私の目の前で飛び降りた。
そこから私はずっと罪悪感と後悔に苛まれている。
当然と言ったら当然の罪なのだけれど、認めたく無い私が居る。

私が見たく無い。と今の景色に背を向けたなら、向けた先にはイベリスの花畑が現れる。

ここは、私を責めるセカイなのか。

もう許してよ。

私は、深月が好きになる前から君が好きだった。
でも君は深月が好きだった。

もう嫌だ。

もう1度過去に戻れるのなら、私は君へ恋をしない。

まぁきっと無理だけれど。

運命(・・)から結局抗え無かったからここに居る。

もうイベリスも見たく無い。そうして背を向けると、向けた先には何も無かった。
ただ真っ白なセカイが続いているだけで、何も無かった。

暫くすると、急に身体が浮遊した。
身体が浮いていて、楽しくてうろうろしたら2つの違和感に気付いた。

1つ、ここには出口が無いのだ。真っ白なセカイで、地平線と呼べるものさえ無い。
左右、方角、上下、全てわからない。

2つ、身体が浮く事に何も抵抗が無い事だ。普通、運動もバランス感覚も良い訳では無い女子高校生がバランスを崩さず浮遊する事なんて出来るだろうか。

少し物音がして、今の場所からの下を向けば全く身に覚えの無い景色が広がっていた。