六大四天王三人衆の一人、山本山元哉の邪悪な野望を打ち砕いた凰雅達は今日も変わらず学園に登校していた。

「能丸、今日の小テスト何点だった?俺に見せてくれよ。もちろん俺のも見せるぞ。」
「珍しいね、凰雅がそんなこと言うなんて。」
「ああ。テストがあったらこういうことをするのが高校生らしいと言われたからな。ちなみに俺は全く勉強していなかった。だから能丸が勉強していなくても大丈夫だぞ。」
「その勉強してないっていうアピールも普通の高校生らしいって言われたの?」
「全くその通りだ。流石は能丸よくわかったな。」
「・・・誰?凰雅にそんなこと吹き込んだの。」
「名前は知らんがクラスにいるあの根暗な双子だ。」
「双子ってことは浦山さん達か。うーん、あんまり真に受けない方がいいんじゃないかな。きっとからかわれてるんだよ。」
「そうか。能丸がそう言うならそうなんだろうな。正直なところテストの点数なんてどうでもいいしな。」
「ところで今日は御用崎君来てないよね?どうしたんだろ。凰雅なにか知ってる?」
「知らん。能丸が登校する前はいたんだがな。その時、何やらのっぴきならない表情で「ついにこの時が来たか。」とか「俺の情報網が火を噴くときがきたようだな。」とか、わけのわからないことを言っていたな。」
「そっか。御用崎君がそう言うんなら何かあるんだろうね。怖いな。」



穏やかに談笑する二人の様子を教室の隅で二人の女性が見ていた。
凰雅のクラスメイトである浦山音多美(うらやまねたみ)浦山素音美(うらやまそねみ)姉妹だ。
「ああ、学芸院君ってホント単純で素敵。」
「布津君に冷たくあしらわれても気にしてないし。」
「布津君の言うことなんでも聞いちゃう学芸院君。」
「どんだけ信頼してんだっての。仲良すぎてヤバいよね。」
二人の双子は教室の端で不気味に微笑を浮かべている。
そんな二人に近づくクラスメイトはいなかったが、転校生のジェシーだけは違っていた。
「ヘーイ二人はどうしていつも端っこにいるんデスかー?」
「あ・・・。」
「・・・。」
あまり声をかけられることに慣れていない双子は距離感が近いジェシーが苦手だったので、逃げようとした。だが、
「オーウ、どうしてさけるデスかー?いっつもミスターオーガをガン見してるの知ってるデース。ミスターオーガに興味を持つもの同士、仲良くしまショウ。」
ジェシーのその言葉を聞いて二人はつい足を止めた。
「え?あ、あたし等別に、学芸院君のこと、別に、興味とか、そんなんじゃ、え?気になるとかじゃ、ないし、別に、えっ?仲良くって、え?あたしらと?えっ?いや、そんなことあるわけないか。」
「ただ視界に入るって言うか体大きいしいつも布津君と仲いいなとかは感じるけどだからってあたし等は興味とかそういうんじゃないしどっちかっていうとあの二人仲良くて微笑ましいなふふふみたいな生暖かく見てるだけだし。」
「オー、確かにミスターオーガと能丸は仲いいデース。あの二人の友情はとても強固なのデース。きっと数多の戦場を駆け抜けてきたに違いないのデース。あれが友と書いてライバルと読むってやつなのデスネー。」
「えっ?は、ジェ、ジェシーさんも、あの二人のこと、そう、そういう目って言うか、その、そういう、あの、目で見て、見て、見て、ふふ。えへひひひ。」
「なんだジェシーさん上手く偽装してるからわからなかったよマジで転校してすぐに特等席であの二人の事観察してるのうわーそういうことマジ平気でするやつ逆に引くわーとか思ってたけどまさか気づかなかったわうん。」
「オー、二人ともなに言ってんのかサッパリでーす。もっとわかりやすく言って下サーイ。」
「えっ?が、学芸院君と、布津君の、え?行き過ぎた、あの、友情を」
「生暖かい目で見守る会じゃないの?」
「オー、これが噂のジャパニーズカケザンなのデスねー。とってもむっつかしーデース。」



教室の隅で騒いでる三人の声が教室中に響き渡る。
凰雅の預かり知らぬところで勝手に盛り上がる人達。
だが学芸院凰雅はそんな些事は全く気にしない豪胆な男であった。
「なあなあ能丸。今日の俺を見て何か感じることはないか?」
「いつもの凰雅と変わらないと思うけど、どこか調子でも悪いの?」
「そうか、わからないか。・・・ヒント、前腕屈筋。」
「ごめん、答えを言われても多分わからないと思う。」