1 刻み殺し

 処刑場で、パヨパヨした人たちが並んで座っている。手首足首を縛って立ち上がれない。
 黒猫鉄火面は手斧を持っていた。一人ずつ、ショート猫パンチの要領で小刻みに何回も斧を振り下ろす。
 マントラの呪文で己自身を戒めるかのように呟きながら。

「楽には殺さない。楽には殺さない」

 さながら木を切るように、赤い血と肉片が飛び散る。樹木と違うのは切られるたび悲鳴が上がることだ。頭や顔から皮膚が剥がれて、血塗られた白い骨が露出していく。肩や胸腹にも刃のスイングが食い込んで、服は真っ赤に染まっていく。

「ギャー、ギャー、アー!」
「お前はVIP待遇だ。ミンス(民主)のエリートよ、念入りに刻み殺してやる」
「止めろよー、人でなしー」

 悲惨な顔で泣き叫び、どうにか身をよじり、転がるようにして逃げたり防ごうとしても無駄。
 黒猫鉄火面は人間ではない。
 何回も何回も斬りつける。

「お、鬼ー!」
「いや、黒猫鉄火面だよ」

 やがて破れた腹から、ムクムクと内臓が溢れ流れ出してくる。赤黒く大便と血の臭いをさせながら、新鮮な生きた臓物が折り重なってこぼれ、畳半畳に広がる。

「まだ殺さない。まだ殺さない」

 致命傷を避けながら、頭や顔面を斧の刃でトントンと小突き続ける。ついでに見ている前で内臓も刻んでやる。目は片方潰れていたけれども、残された眼球は恐怖と絶望と苦悶にクルクル動く。瞼は剥げていて、目玉だけが跳ねて飛び出しそうに動いている。血涙を浮かべた耳を丁寧に顎まで削ぎ落とす。

「ウグー、ウー! ウー!」

 ちぎれた唇からは終わりのない苦鳴が流れだしていた。
 太い血管を切らないように注意しつつ、手斧で叩くように手足を刻み、全身の皮が破れ剥がれて真っ赤になっていく。血溜まりの中で反応が鈍くなったので、関節をうち砕くと絶叫して今更ながらにのたうった。手足全部、砕く。
 その頃には「殺してくれ」と懇願するようになっていた。死んだ方がマシなような苦しみだったからだ。もちろんそれで終わるわけがない。
 今度は断末魔的にそそり立っていた陰茎と金玉を切り落とす。泡を吹いて悶絶し始める。
 そんなものはひとまず放置して、居並び座っている一人、愚かなアカのバカ女(?)のところへ行く。目の前に切り取った男の陰部を投げ出して、言った。

「食え。もし食わないなら、次お前の番だな」

 縛られたままに犬食いするバカ女に、黒猫鉄火面はふと思いついたように問いかけた。

「アサバちゃん(仮名?)、特別のサプライズはどうしようか? 焼き串とハンダゴテと電気とガソリン、いったいどれが良いだろうかね?」