嬉しそうに煮物を頬張る様子に、ただただ幸せな気持ちになった。私も筑前煮から食べようと箸をとると、彼は「ねえ」と上目遣いで見つめてきた。 「……これ作ってる時、俺のこと考えてくれた?」 投げかけられた言葉に箸が止まる。食べようとしていた人参は奇跡的に弁当の中に転がり落ちて、出汁まき卵の上に着地した。 「え、え?」 「煮物、俺の為に詰めたって言ってたから、違った?」