話を聞いていると、不意に彼は思い出したようにこちらに顔を向けた。

「ん……、そういえば五十嵐さんの両親も確か海外でお仕事してるんじゃなかった?」

「そうだよ」

「じゃあ五十嵐さんは今一人暮らしなの?」

「うん」

 頷きながら、私は疑問に思った。私は日野くんにそんな話をした覚えはない。

 両親が仕事で家にあまりいないことは芽依菜ちゃんに話をしたけど、海外赴任についてまでは伝えてない。両親がすぐ傍にいないことを伝えるのは、無用心だと止められているからだ。八百屋のおじさんには両親が娘をよろしくと挨拶をしていたけど、なんで彼は知ってるんだろう。先生から聞いた……? 問いかけようとすると、日野くんは「なら俺と一緒だ」と笑う。