「女子には態度悪いって話なの。愛想が無いっていうか」
「そう……なんですか」

 噂は所詮、噂でしかない。
 でも、納得できる部分はあった。
 確かに昨日話した時は素っ気無く感じたし、お世辞にも愛想がいい、とは言えなかった。それに関しては、私も人のことは言えないけれど。

 だけど私は、助けてもらった身だ。感謝こそはしているものの、彼に対して悪い印象は抱いていない。それに、今朝は好意的に接してくれた。 
 話しやすかったし、女嫌いって印象は全く感じなかった。

 もしかして、日によって態度が変わる人なのかもしれない、と頭の片隅で考えてみる。
 それでも、やっぱり彼に『女嫌い』というワードは、私の中では全く結び付かなかった。


・・・


 気分屋さんなのかな? と思ったキリタニさんは、全然気分屋さんなんかじゃなかった。
 やっぱり噂は噂でしかなかったみたい。

 今日は彼と3回目のご飯会。
 箸をつつきながら話す内容は、ほとんどが仕事の話題。
 キリタニさんはすごく真面目な人で、仕事に対しては特に厳しい目を持っていた。

 自分なりの営業スタイルをきちんと確立していて、滅多に聞けない営業の極意を彼から教わるのは、なかなか新鮮で面白い。彼もマーケの内情を知りたかったようで、互いに色々と情報を共有した。

 とはいえ、全てをおおっぴらに公言するわけにもいかない。
 そうなると、会話の限界は近づいてくる。
 次第に、休日の過ごし方や趣味などに話題は移っていた。

「実は株をやってて」

 と、うっかり口を滑らせてしまった。