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神様ではなかった。
キリタニと名乗ったその人は、黒いコートに身を包んだサラリーマン風のお兄さん。整った顔立ちの、なかなか素敵なイケメンさんだった。
見た目はとても若く見える。
私と同じくらいの歳だろうか。
そう分析しつつ、助けてくれたお礼がしたいと申し出る。
けれど彼は、頑なに拒否の態度を取った。あまり私に関わりたくない、という意思表示かもしれない。
確かに、空腹で道端に倒れているような奴を助けたからって彼に何かメリットがある訳でもないし、そんな変な奴と関わりたくないと思われても仕方ないかもしれない。
残念だけど、私は大人しく引き下がった。
彼が少し気まずそうな態度を見せたので、明るい(でもきっと無表情)態度で接すれば、安心したように表情を和らげてくれた。
見ず知らずの人間を見捨てたりせず、ちゃんと助けてあげられる人。
この人から受けたご恩と優しさだけは一生忘れないようにしよう。
そう胸に刻み込んだ。