もはやお腹が空きすぎて気持ち悪い。
 貧血にも似た不快感が身を襲う。
 脳に酸素がうまく回っていないのかもしれない。
 翳む視界の中、視界の端に捉えたもの。
 春の息吹とともに凛と聳え立つ、それはそれは立派なつくしんぼ。

 ……つくしんぼって生で食べても美味しいのかな……。

 思考回路が危機レベル5あたりまで到達しかかったその時、後ろに人の気配を感じた。
 そして、トントン、と肩を叩かれる。
 声を掛けられた気がするけれど、つくしんぼに意識が向いていた私にその声は届かない。

 もう私はダメです……。
 お腹が……すきました……。

 そんな心の中の嘆きは、どうやら口に出てしまっていたらしい。私の訴えを聞いた誰かにガッと腕を引っ張られ、近くの公園まで強制連行されてしまった。

 あれ。
 今、私の身に何が起こってるの。

 事態を把握できないままベンチに座らせられて、目の前に何かを差し出された。
 大きな手のひらの上に転がるそれは、コンビニでよく見かけるあの小さいおにぎり。
 ちょっと小腹が空いた時に、つまみぐい程度(?)で確かな満足、それでいてワンコインで購入できるアレです。

 ペットボトルのお茶も一緒に「どうぞ」と差し出されて、その意味を理解した途端、私は悟った。

 このひとは……神様か……。