ネーミングセンス皆無か。
 苦笑しつつウサギを撫でれば、つぶらな瞳を俺に向けたまま鼻先をすんすんと鳴らし始めた。

 俺の手は食いモンじゃないんだけど。飼い主に似たのか。
 モルモットらしい生き物に至っては、どこに目があって口があるのか、相変わらずわからない程のもっさり具合だ。

「ペット、いたんだ」

 先程の鈍い金属音は、ゲージを開閉している音だったらしい。

「はい。キリタニさんはペットを飼っていないようなので、黙ってたんですが。せっかくの機会なのでご紹介しようかと」

 ああ、なるほどな。って思った。ペットを飼っていない奴にペットの話をされるほど、苦痛なものは無いから。
 その辺りの機転や気遣いが、咄嗟に自然とできてしまう。他の女の子には無い、水森の長所だ。

「あの」

 両腕に収まっている2匹を抱え直して、水森は俺を見上げた。
 相変わらずの無表情で。

「これからも、よろしくお願いします」
「うん」
「飽きられないように、頑張ります」
「……」

 その言葉の端から、彼女の中にある不安が感じ取れる。
 好意を抱いていた男から飽きられて、振られてしまった過去の記憶。

 俺を信用していないわけじゃない。
 それでも、不安要素は拭えないんだろう。

「……頑張らなくてもいいよ」
「でも」
「関係が変わっても、何かを無理に変える必要ないだろ」
「………」
「今までみたいに仕事の話して、株の話もして。またこうやってご飯、食べに行こ」
「……キリタニさん」
「俺達は『ご飯仲間』、だろ」
「……はい」