膝上に置いた新聞の、その上で作られている握り拳が微かに震えている。
その震えが緊張からなのか、それとも怯えからなのかはわからない。
けれど水森の口から零れた告白は、まるで芯が一本通っているかのように、真っ直ぐと俺の耳に届いた。
正直、不安な部分もあった。
デートに誘った事も含めて、俺のアプローチに彼女は否定的ではなかった。
水森が俺に向けている想いは、俺が水森に向けているものと同じ類だと直感的に感じてはいたものの、それだって確信は無い。
たとえ同じだったとしても、過去のトラウマから告白を受け入れてもらえないかもしれない、そんな不安もあったから。
けれど、彼女は俺の想いに応えてくれた。
チャンスをくれた。
固く閉ざされている拳に、そっと触れてみる。
そろりと覗き込むように、水森は俺を見上げてきた。
揺らめいている瞳の奥には、隠しようのない淡い想いが滲んでいる。
「ありがとう」
「……いえ」
「……あのさ。いつ頃から」
「あ……私も、わりと最初からです」
「そう、なんだ。全然気付かなかった」
「すみません、わたし表情無いし存在感も薄いから」
「いや、存在感の薄さは関係ないと思う」
至極真面目に答える水森に苦笑する。
ていうか全然薄くない。
あんなに皆から好かれてるくせに。