「けど、それなら最初からそう言ってくれればよかったのに」
「……」

 何気なく放った言葉に、彼女はぴたりと歩みを止める。
 当然繋がれていた手もその場に止まり、俺の足も動けなくなってしまった。
 振り向いた先にいる彼女は相変わらずの無表情で、なのに。なんだろう、どこか怯えているように見える。

「……どうした?」
「……ごめんなさい」
「何が?」
「せっかくのお出かけなのに、ご飯の事ばかりで」
「……?」
「……子供っぽくてごめんなさい」
「……」

 不意に、先日の彼女の言葉が蘇る。

 自分は恋愛に向いてない──―
 たった20の女の子が言うには、それはあまりにも達観しすぎている言い草だ。

 水森は確かに見た目は可愛いし、反して中身が面白い。そのギャップに惹かれて、周囲に人が集まってくるんだろう。
 女友達だけじゃなく、男も。
 もしかしたら学生の頃は、結構モテていたのかもしれない。

『―――いつも、すぐフラれちゃうんです』

 過去に付き合っていた奴らは、そんな彼女の一面しか見えていなかったのだろう。経験の浅い学生の頃なら仕方ないかもしれない。
 付き合い始めてからわかる彼女の無邪気な面に、抱いていたイメージの違いに、それまでの興味が薄れてしまうんだろう。

『実際に付き合ってみたら、なんか違った』

 そんな、幼稚で残酷な一言を彼女に切り刻んで。