「でも焼いて食べるならサンマがいいです」
「俺はサバの味噌煮が好きだな」
「サバも美味しいです」
「でも、釣れたての魚を焼いて食べるものに勝るものはないな」
「同感です。新鮮な魚が一番美味しいです」
「向こうにエイの群れもいる」
「あの大きさなら、2匹はギリ食べれそうです」
「イワシの群れとかすげーな」
「あれなら20匹はいける」
「2桁いっちゃうのか」

 何でも食べる事に脳内変換してしまう水森と、それに合わせる俺の会話は物騒すぎて少し引く。はたから聞けば異常な会話だ。水族館で話すべき内容じゃない。
 その証拠に、ガラス越しに悠々と泳いでいた魚達は身の危険を感じ取ったのか、俺達の目の前でグルンッと方向転換した。
 そして奥の方へ颯爽と逃げ出していく。
 何というか、連れが色々と申し訳ない。


「あっ、」

 ドーム型のトンネルに足を踏み入れた時、隣で歩いていた水森が急にふらついた。足元の段差に気付かなかったらしい。
 つまづいて転びそうになった所を、咄嗟に二の腕を掴んで引き寄せた。

「すみません」
「足ひねってないよな?」
「それは、大丈夫です」
「ならいいけど」

 そのまま腕を離そうとして思い留まる。
 滑るように下へと降ろした手を、彼女の指に絡めた。