ある意味、賭けに出た。
もし、この雰囲気の流れで誘いを断られたら、その時点でもう脈は無いだろう。
まだ想いが浅いうちにさっさと身を引こう、と。
そう考えていたけれど。
「……あ、空いて、ます」
「………」
「がら空きです。24時間自宅待機中ですセコム並みに」
「……セコム」
俯いたまま冗談を言う彼女の横顔はいまだに赤く、そんな反応にまた嬉しさが込み上げる。
素直に可愛いと思った。
好きだと自覚すればするだけ、彼女への想いは膨らんでいく。
堪らなくなって、グラスを握る水森の手に触れる。
ぴく、と彼女の肩が小さく震えた。
「どこに行きたいか考えておいて」
「……はい」
視線は合わない。
けど、心の距離が近づいた気がした。