駆け回っていた子供達が、母親に呼ばれてひとり、またひとりと走り去っていく。そうして人気が無くなった公園には、遊具の影だけが伸びていた。
その片隅に、古ぼけたベンチが置かれている。
白く塗装されたペンキは所々剥がれ落ち、年季の入りようを感じさせた。
俺はそのベンチに座り、隣にはうなだれた様子の彼女が座る。どうぞ、と控えめに声をかけて、購入したばかりのおにぎりとお茶を手渡した。
のろりと女の子が顔を上げて、虚ろな瞳が俺の手元で視線を止める。
―――途端、ぱあああ、と。
まるで花が咲いたかのように、彼女の表情が一変した。
驚きで見開いた瞳がきらきらと輝きだし、口は半開き状態。興奮しているのか、頬には赤みが差している。
ペコペコと何度も俺にお辞儀をして、受け取ったおにぎりのパッケージをビリッと裂き、肉食動物の如く、すごい勢いで食べ始める。口を挟む隙すらない。
目尻にはうっすらと、涙まで滲ませていた。
「………」
むせび泣きながらコンビニおにぎりを貪る人間を、俺は今日、初めて目にした。
こんなに喜ばれて、製造した業者もさぞ嬉しいだろう。