仕事以外での彼女との共通の話題は、意外な事に『株』だった。

 ネット上には、お金を掛けずに株式投資を楽しめるゲームがいくつかある。高校生の頃、そのバーチャルゲームのひとつに手を出したのが株を始めるキッカケになった。

 興味本意のつもりだったが、投資の仕組みさえ理解出来れば、これがなかなか面白い。自動的に通貨が作られるシステムの安心感もあって、のめりこむようにハマっていった。

 ゲームと言っても実際の金銭が絡んでいないだけで、本物の株式投資に近い雰囲気だ。株を始めたい初心者が、練習がてらバーチャルトレードに手を出す場合も多い。

 3年も続ければ、ある程度株の知識はつく。
 自身で稼げるようになれば貯金も出来る。
 そこで俺はバーチャルから卒業し、実際の株投資に手を出した。

 ネットとは違うリアルな世界。
 当然、儲けや損失が懐に響いてくるから、生半可な覚悟で投資はできない。見極めを誤れば、マイナス数十万の損失が俺を待っている可能性もあるからだ。

 それでも、株に手を出した事で得た膨大な知識量は、少なくとも今の俺にとってプラスになっている。


 水森も株をしていると知ったのは、3回目のご飯会に誘った時だった。

 仕事の話が尽きれば、会話の流れは自然とプライベートな話題に移る。その過程で、株投資をやっている事を本人が明かしてくれたのがキッカケだった。
 俺も同じように株をやっていた事に、彼女自身もまた、相当驚いていた。