「おっす。何してんの桐谷クン」
「なあ、あれって」
「うん? あ、ミズキチちゃんと清水課長じゃん」

 ……ミズキチ?

「水森だろ?」
「うん。ミズキチちゃんって、あだ名な」
「あだ名?」
「本人が言ってた。小学生の頃から、あだ名が『みずきち』なんだとさ」

 軽快に笑われて、胸に苦いものが広がる。
 あだ名を知った経緯よりも、『本人から聞いた』という発言に反応してしまった。

「……なに、お前仲いいの」
「いや、すれ違ったら話す程度だよ。ミズキチちゃん、誰とでも仲いいからみんなに好かれてるし。友達多いんじゃない?」
「ふーん……」
「人気あるぜ、あの子。あ、人気って男にモテるとかじゃなくて。面白すぎるキャラだから」
「ああ……そういう事」

 まあ、それはわかる、けど。
 水森がああいうキャラだって知ってるのも、仲いいのも。俺だけじゃなかったんだなって。
 当然と言えば、当然だけど。
 なんとなく面白くない。

「まあ、実際狙ってる奴もいそうだけどな。可愛いし」
「……」
「俺先に行くからなー」
「……おー」

 やっぱり聞くんじゃなった。
 朝から気分悪い。