可愛いのに無表情、そしてサバサバした性格と大食いキャラという意外性が、男性社員のみならず女性社員、はたまた上司から面白がられている。
 お陰で水森は、アジュールのマスコットキャラ的な位置付けで、みんなに好かれているようだ。


・・・


 水森と知り合ってから1ヶ月ほど経った頃。
 エントランスで、彼女と清水課長の姿を見かけた。
 俺より少し前に出社してきた水森を課長が見つけて、声を掛けてきたようだった。

「おー水森。おはよう」
「清水課長。おはようございます」

 爽やかな笑顔を披露する課長とは逆に、水森はやっぱり無表情のままだ。

「今日もチビで無表情だなー」
「これが私のキャラです」
「ちゃんと朝ごはん食べたか? 歯磨いたか?」
「磨きました。歯磨き後はフロスで歯茎をシコシコキュッキュしました。ぬかりはないです」
「そうかそうか。えらいぞ水森。でも男の前でシコシコとか言うのはやめような」
「はい」

 ……朝からなんつー会話してんだよ。軽くセクハラだろ。

 冷めた顔で内心突っ込む俺をよそに、2人の周りには他の女性社員が集まってくる。
 輪の中心にいる水森を見ていた俺に、背後から出社してきた同僚の1人が話しかけてきた。