「半端な結果で満足したくないし、全力で仕事に取り組める環境にしたいんです」

 切々と訴える水森の目が、俺を捉える。
 迷いの吹っ切れた瞳は、力強い光を灯していた。

「……協力してくれますか?」

 利用ではなく、協力。
 そう表現を変えたのは、一緒に手を組もうと告げた俺の提案を彼女が受け入れた証。

「ん、よろしく」

 握り拳を作って彼女に差し向ければ、一瞬目を見張った彼女の表情が柔らかく緩む。こち、と互いの拳がぶつかった。

 ……正直言うと、水森が今抱えている問題―――営業とマーケの連携問題は、俺の中では然程、大きな問題ではなかった。

 ただ彼女には彼女の目的があって。
 俺には、俺の野望がある。


 人と違うことがしたい。
 誰もが出来なかった事に挑戦したい。
 競うなら勝ちたい。
 一目置かれたい。
 普通の結果じゃ満足できない。

 勝手に作り上げられた、窮屈な人間関係や社会のルールに縛られてやりたい事も出来ないなんてまっぴら御免だ。


「あ、水森。LINE交換してもいい? 仕事で何かあれば連絡したいから」
「はい」

 何の躊躇いもなく、素直に頷いてくれた水森の態度に安堵する。
 仕事、と格好つけておいて、本当はただ彼女の連絡先を知りたかっただけだが、そんな事は口が裂けても言えない。