「情報共有と、相互理解か」
「そういう環境づくりが私達には必要だって、個人的には思っているんですが……その、」
彼女らしくない、歯切れの悪い言い方だった。その先に続く言葉を、俺に伝えようか止めようか、躊躇している様子が垣間見える。
そこで、やっと気付いた。
水森が今、何を言いたいのか。
あのファイルを俺に見せて、何を伝えたかったのか。
今までの話の流れから推測しても、その答えはひとつしか思い浮かばなかった。
「……環境づくりか。難しいよな」
「……はい」
「社員の意識を変えるなんて、ひとりで出来るものじゃないし」
「……」
「かと言って後輩の俺らが、変に出しゃばる事もできないしな」
「……でも、何かキッカケがあれば」
キッカケ。
社員の意識を変えざるを得ない、何か。
「だったら、
俺と組もう、水森」
はっきりと告げれば、彼女の纏う空気が変わる。俺を見上げた水森の目が、驚きで見開いた。
けれど瞳の奥にある光は、確かに揺ぎ無い期待感で満ち溢れていた。