……いや。倒れているというより、蹲っているという言い方の方が正しいのか。外壁に片手をついて、彼女はその場に屈んでいた。
 長い髪が顔を覆い隠して、車内からでは表情はわからない。けれど、どうにも尋常ではない様子に見える。貧血だろうか。

 近くに車を停めた後、運転席から降りる。
 周囲を見渡しても、俺以外は誰もいない。
 一向に動く気配の無い彼女に駆け寄り、肩に軽く触れてみる。

「あの、大丈夫ですか」
「………」

 応答がない。
 もう一度肩を叩いてみるも、彼女は振り向くどころか微動だにしない。
 けど微かに、「うぅ……」と苦しげな呻き声だけは、かろうじて耳に届いた。

 貧血かと思ったが、もっと深刻な状況なのかもしれない。表情はわからずとも、具合が良くなさそうなのは見ただけでわかる。体調が悪ければ病院まで乗せていく事も出来るが、喋る事もままならない状態なら、素人判断はせずに助けを呼んだ方がいいだろう。

 すぐに救急車を呼ぶので、スマホをタップしながらそう伝えようと口を開きかけた、

 その時。



「……おなかが……すきました……」

「……へ」