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 帰宅して風呂を済ませてから、ホットコーヒーを淹れてダイニングテーブルにつく。彼女から託されたファイルに目を通し始めてから1時間、短針は既に23時を示していた。

 水森から手渡されたのは、A4サイズの不透明表紙にポケットタイプのクリアファイル。中に収められている書類には、彼女の手書きで長々と文章が綴られている。そこには営業職ならではの『問題点』について、こと細かく記載されていた。

 クセのある字体は、女の子らしい丸文字で。
 けれど中身の内容は、可愛さとは全く欠け離れていたものだった。

『不快に思うかもしれない』

 彼女がそう苦言したのも、ファイルの中身を確認した今なら納得できる。確かに会社の人間、特に営業社員には安易に見せられない内容だ。

 でも。

「……こんなので嫌うわけ、ないのに」









『営業とマーケの確執について』

『互いの部門に対して、不満を抱いている社員が9割を占める』

『高い成果に繋がらない要因は、情報共有と相互理解の欠如』

『業務内容の違いも確執の影響』

『部門間連携後も、顧客の状況を両者が共有できていない現状』



 それは、営業とマーケの在り方に異論を唱える内容だった。