「今はまだ無理でも、着実に結果を残していけば、いつか大きなお仕事が貰えるかもしれない」
「……」
「いつか私も、何かデカい事がしたいと思う日が来るかもしれない」
「……」
「何かをしたいと思った時に、お金が理由で諦めたくはありません。だから私は、アジュールに来ました」
凛とした声。
真っ直ぐな言葉が、俺の心を震わせる。
……ああ、
なんか。
やばい。
すげぇ感動した。
結局俺は、自分を過大評価していたんだ。
努力すれば何とかなる。
今までだって、そうだったから。
驕った考え方だとしても、確実に結果は出始めていた。
なのに、仕事を貰える機会は来ない。
他の部署と仕事を請け負うことも無い。
いつまで経っても新人扱いで、いつも研修の日々。
そんな現状に不満を抱いていた。
けれど水森は俺よりも、明確なビジョンを抱いてる。
ずっと先を見据えてる。
今の現状も「いつか」の為だと腹を括っている。
「稼ぎたいからアジュールに入社した」なんて、他の奴が聞いたら痛いヤツだと思われるだろうが、本質はそこじゃない。アジュールには仕事意識が高い人間が集まってくる、だから自分はここで仕事がしたいと彼女は言ってるんだろう。
俺だってそうだ。
あのキャッチセールスを見た時、水森と似たようなことを思った。