「アジュールに行けば稼げると思ったのは、直感です」
「……直感」
「あのキャッチセールスに、私も惹かれました。あの一文を文字通りに受け取るか、それとも何か別の思惑があるのか。そう考えた時に、後者だと気付いたんです。人事担当の方は、わざと煽って私達を試したのではないでしょうか」
「わざと……?」
首を捻る俺に、水森は淡々と言葉を紡ぐ。
「あのキャッチセールスを鵜呑みにする輩がいるとしたら、楽して稼ぎたいと思っている能無しのお馬鹿さんか、本気でお金を稼ごう、成功してやろうと思ってる人。会社が欲しい人材は、後者の人達ですよね」
「……確かに、そうだろうな」
「だから、この会社はお金を稼ぎたい人達が集まっているんだろうと思いました。あの胡散臭いキャッチセールスを、本気で狙いに来る人達が集う場所です。そういう人達は、成功したいと思うばかりに仕事意識が高くなります。そんな職場で、自分の得意分野を活かしたいと思いました」
「得意分野?」
「はい。私、情報収集が好きなので」
……ああ、なるほど。
だからマーケ所属なのかと納得した。
あの付箋だらけのファイルは、情報収集が好きな彼女の痕跡の証だ。付箋自体も普段から持ち歩いているんだろう。