自分が特別な人間だとか、そんな風に思っていたわけじゃない。
 むしろその逆で、俺は努力に努力を重ねて、やっと普通のレベルになれる程の要領の悪さだ。
 人並み以上の努力をしたから、学力もそれ以外でも、結果を残すことができた。

 "志は常に高く"

 努力が必ず実を結ぶわけじゃない。
 でも、手が届くこともある。
 そして手が届いた時に湧く感動を、俺はもう知っている。


 アジュールの説明会に出向いた時、そのビジョンは更に強まった。
 確かな営業力を維持発展させ、全国展開を図る。ゆくゆくは各地で地域密着型の営業を行うことを、当時の担当者は口にした。

 その熱意は俺達にも伝わってくる。
 この人達は本気で、このアジュールをでかい企業にしようとしている。
 その会社が変わる瞬間に、俺も立ちたいと思った。いや、会社を変えるひとりになりたかったんだ。

 あまりにも無謀すぎる挑戦。
 それでもやる価値はあると思ったから、アジュールへの入社を決めた。

 ……今思えば本当に、ガキみたいな発想だったと思う。


 水森は、黙って俺の話を聞いていた。
 途中で口を挟むこともなく。

 そして一通り話した後、

「私も同じですよ」

 俺に共感してくれた。