「便利なんだけど、すぐに剥がれ落ちるから苦手なんだ」
「あ、わかります。粘着力の低いタイプは面倒ですよね」
「粘着が高い低いとか、あるんだ」
「フィルムタイプの付箋なら、剥がれないです」

 そう言って、彼女は手提げバッグの中を漁り出した。
 取り出したのは、多種多様な付箋たち。スタンダードなカラー付箋の他にも、絵柄付きの物や和風素材まで揃っている。

「こんなにあるんだ」
「フィルムタイプは粘着力が高いし、透明で出来てます。下に書いた文字が透けるので、使い方によっては便利ですよ。他にもマグネットタイプもあります」
「へえ……」
「付箋も日々進化を遂げているんです」

 真面目に茶化されて、笑みが浮かぶ。

「水森ってさ、なんか」
「?」
「文房具好きそう」
「好きですよ。可愛いものもたくさんありますし。使い方次第で仕事も捗ります。基本デスクワークだし、根詰めてると疲れてしまいますから。可愛い小物達に癒されてます」
「ああ、そういう使い道ね」

 女の子ならではの発想だ。
 男の俺ではそんな思考には至らない。