仕事に楽しさを見出だせない。
 やりがいを感じない。
 収入や業務内容に不満はないし、人間関係も上手くいっている。成績もそこそこ順調だというのに、心はずっと空虚なままだ。

 仕事が楽しくない、と。
 そう思い始めたのは、いつの頃だったか。

 とは言え、給料が発生している以上はビジネスだ。職務放棄する訳にもいかない。

 効率よく仕事をこなし、成績を上げて会社の利益に貢献し、給料を得る。楽しいが楽しくなかろうが、代わり映えの無い毎日だろうが、社会人としての責務は全うしなければならない。そこに自分の感情は関係ない。

 働かなければ、収入がなくなる。
 生活が出来なくなる。
 今しがた購入した物も、働いて得た給料があってこその食料品だ。

 働かざる者食うべから―――
 新約聖書の一節からこの表現が知れ渡ったらしいが、古くから社会主義の戒律は厳存していたという事だろう。







「……さすがに腹へった」

 大通りへと車を走らせて数分後。
 急激な空腹感に見舞われた。