入社して数ヵ月間は研修期間だ。実際の営業は、メンターとして配置された先輩と二人三脚で行う。
 高額商材となれば顧客がつかないことも多いし、契約を結ぶことができたとしても、今はまだ俺自身の実績にはならない。

 それでも、知らない知識を得られるこの環境には充実していた。
 そして何より、数多い失敗談と僅かな成功談を惜しみなく教えてくれた先輩達の存在は、精神的な面でも救われた部分が多く、ありがたかった。

 1人立ちしたのは、半年が過ぎた頃。当時の成績なんて、目も当てられないくらいに酷く、散々な結果だった。
 それも当然だ。俺にはまだ、経験値が無さすぎる。
 でも、だからって妥協は許されない。
 俺は天才でもなければ出来の良い人間でもないから、普通の人の数倍、いや、数十倍は努力しなければならなかった。

 そうして結果を出せたのは、本当につい最近のこと。
 初めて絵画を売ることに成功した時、これまで積み重ねてきた努力が全て報われた気がした。
 顧客の元に絵画を発送した時の感動は、いまだに忘れられない。

 この経験が、俺の心に火をつけた。