「あ、美味い」
「ですよね」
「ミートソースの酸味が効いていて、食欲進む味だな。外側がサクサクしてて、歯応えもいい」
「このサクサク感と、分厚いお肉のジューシー加減が楽しめるのも、絶賛する要素のひとつです」
「うん、わかる。本当に美味い。水森ほどじゃないけど、これなら俺も2皿はいけそう」
「私の分、ひとつあげますよ」
「いいの?」
「私はこの後、チーズスパゲティ3つ頼むので十分です」
「……」
……3つも。
「はーいお待たせ~。追加の3つ分置いとくよ~」
「ありがとうございます。それと、ウーロン1つお願いします。あとでチースパ3つ頼む予定です」
「はーいその時はまた呼んでね~」
既に慣れているといった感じで、彼女は厨房へと戻っていく。
いや、実際慣れているんだろう。
普段からこんなに暴食漢なのか、と苦笑しつつ顔を上げたら、既にチキンボロネーズを一口摘んでいる水森の姿があった。
その表情はすっかり和らいでいる。
旨い料理に舌鼓を打つ彼女の、柔らかく緩んだ口角を見て笑みが浮かんだ。
昨日の、おにぎりとお茶で満腹感を得た時に見せた顔と同じ顔。あの時垣間見た幸せそうな表情と、今、目の前にある表情が一致する。
……食べてる時は、笑うんだな。