この店の常連客でもある水森と彼らは、既に周知の仲らしい。名前で呼び合うほど親しいのだろう。
 その主人は俺の姿を見るなり、目をぱちくりとさせた。

「大変だ。さやかちゃんが男を連れてきた」
「なんだと。まじか」

 彼の一言に即反応した女の人が、くるんと体を半回転させて振り向いた。俺達を交互に見て、軽く口笛を鳴らす。

「しかも男前じゃん」
「私から誘いました」
「やるね、さやかちゃん」
「たまにはやる女です」
「そうそう。今の時代、女も積極的でないとね」
「同感です」
「………」

 なんとなく入り込めない空気の中、女同士の淡々とした会話が続く。

「席、結構空いてるよ。どこでもいいよ」
「ありがとうございます。キリタニさん、どこがいいですか?」
「ああ、うん。どこでもいいけど」
「じゃあ、向こうにしましょう」

 1人でさくさく決めていく水森に苦笑しながら、彼女の後をついていく。初めて出会った昨日と今日とでは、彼女の印象はだいぶ良い方向に変わってしまった。
 可愛い見た目とは裏腹に、かなり性格がサバサバしてる。変に媚びたりする事もないし、態度もあっさりしていて付き合いやすい子だ。あくまでも俺の場合だが。