「もちろん大丈夫です。是非、お礼させてください」
「お礼、とかじゃなくてさ。ただ一緒にご飯を食べに行こうって話」
「なるほど。ご飯仲間ですね」
「え? あ、うん。それでいいけど」

 お礼とか、かしこまって欲しくない。
 お礼されて当然だとも思っていない。

「あ。着いたので、わたし降りますね」
「うん。仕事終わったら1階で待ってる」
「はい。17時ですね。楽しみにしてます」

 3階でエレベーターを降りた彼女は、扉が閉まる寸前、また俺に向かって頭を下げた。
 この光景は何度目か。
 その礼儀正しい姿に、更に好感を覚えた。

「……マーケ部門の水森さやか、か」

 大食いで、ちょっと天然入っていて。
 けど幼い見た目とは裏腹に賢い。
 なぜかいつも無表情の、礼儀正しい女の子。

 ……変わった子だな。
 普段からあんな感じなんだろうか。


 彼女の事をもっと知ってみたいと思った。
 結局その日は仕事中も、水森と名乗ったあの子の存在が気になってしょうがなかった。