正直に言えば、紫織への想いに整理は着いていない。
 しかし、ずっとこのままではいけないとも分かっている。
 だからと言って、恋愛感情を抱いていない相手と軽い気持ちで付き合えるほどの器用さも持ち合わせていない。

 恐らく、誓子だったら気楽な付き合いでも構わないと言ってくれるかもしれない。
 だが、涼香はどうだろう。
 彼女は非常に真面目だ。
 奔放に振る舞っているようでも、いや、根が真面目で不器用だからこそ、自分を上手く曝け出せないのではないだろうか。
 宏樹という似たような存在が身近にいたから、何度か逢っただけで涼香の本質は分かってきたような気がする。

 何にしても、涼香に誓子の話を持ち出したのは失敗だった。
 誓子は逆に涼香や紫織の話を持ち出してもさほど気にしないだろうが、涼香は非常に気にする。
 多分、自分の存在は朋也にとって何なのだろうかと考え込んでしまったかもしれない。

 宏樹は、朋也からアクションを起こす必要はないと言っていた。
 だが、間接的にでも涼香の気持ちを知ってしまった以上、今後、彼女とどう接していいか分からない。

 ふと、紫織に相談することも考えた。
 しかし、やはり紫織には言えない。
 涼香と紫織は朋也が思っている以上に強い絆で結ばれている。
 だからこそ、涼香の気持ちを蔑ろにしたと知れば、朋也を決して許しはしないだろう。
 紫織にとって、涼香は朋也以上に大切な存在だ。
 それは高校の頃から見ていてよく分かっていた。