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 家に帰って来たのは、ちょうど日付が変わろうとしていた頃だった。
 朋也と宏樹はそれぞれ、おやすみの挨拶をしてから自室へ入った。

 朋也がずっと使っていた部屋は、出て行った頃と全く変わっていない。
 母親がこまめに掃除をしてくれているのか、埃っぽさもほとんどなく、むしろ寮の部屋の方が汚いのではと思えるほどだ。

 朋也はベッドに携帯電話を放り投げ、そのまま仰向けに倒れ込んだ。
 もちろん、布団はずっと敷きっ放しだったわけではない。
 朋也が帰って来ると知り、母親が押し入れから出した布団を天日干しして敷いてくれたものだ。
 寮で使っている万年床の布団と違ってふかふかで、ほんのりと陽の匂いもする。

 ぼんやりと天井を眺めていると、涼香と誓子の面影が、交互に浮かんでは消える。
 そして、時おり紫織も浮かび上がる。

 自分に真っ直ぐに飛び込んできた誓子。
 対して、無遠慮なようでどこか控えめな涼香。
 本当に対照的なふたりだと思う。
 さらに紫織。
 紫織はどちらとも似ていなさそうだが、どちらかと言えば誓子により近いかもしれない。
 紫織は一見大人しそうで、真っ向から相手に気持ちをぶつけるタイプだ。
 そして、決して諦めることをしない。
 そのしたたかさが頑なだった宏樹を射止めることとなった。