「だよな」

 朋也は短く答えるだけに留めた。
 よけいな詮索をされることを宏樹は好まない。
 だったら、鈍い弟のままでいた方が兄のためにもなる。
 相談に乗ってもらえたことに対しての感謝でもあった。

「なあ兄貴、俺、まだ食い足りないんだけど?」

「お、そっか。だったら思いきって丼ものでも頼むか? ここは親子丼も美味いぞ」

「それいいわ! ちょうどガッツリメシ食いたいって思ってたんだよ!」

「若いな」

「兄貴は食わねえの?」

「俺はいいわ。年寄りはそんなに食えねえし」

「また言うか……」

 呆れて溜め息を吐いたものの、すぐに気分を変え、大声で従業員を呼んだ。
 意気揚々と親子丼とウーロンハイを注文する朋也の姿を、宏樹はニヤニヤしながら眺めていた。