「何もする必要はないだろ」

 あっさりと返され、肩透かしを食らった。

「何もする必要はねえ、って……。無責任じゃねえか、それって……」

 口を尖らせて睨むと、宏樹はわざとらしく肩を竦めて見せた。

「無責任も何もないだろ? じゃあ、逆に訊くけどな。朋也は自分に直接告白もしてない相手に、『君の気持ちには応えられないから』って言えるか?」

「それは……、言えねえよ……。勘違いだったら恥ずかしいし……」

「だろ? だったら朋也からアクションを起こす必要はなし。もし、彼女が何らかのアクションを起こしてきたんだったら、その時はちゃんと向き合ってやればいい」

「断ればいいのか?」

「お前の選択肢には〈断る〉しかないのか?」

「別に、それは……」

「じゃあ、存分に悩んどけ。ああ、真っ向アピールしてきた子もいたんだっけ? その子のことも含めて真剣に考えるんだな」

「めんどくせえ……」

「楽な恋愛なんてあるわけないだろうが。全てが丸く収まってしまえば誰も苦労しない。――てか、朋也だって辛い経験はしてるだろ……」

 最後は消え入るような声だった。
 はっきりとは聴こえなかったものの、口の動きから、「俺のせいで」と言ったのは察することが出来た。