「確かに、紫織が聴いたら朋也に掴みかからん勢いで怒ってたな」

「――それは、何となくそんな気がしてた……」

「そこまで分かってて紫織の友達の気持ちは分からんのか、我が弟は?」

「ふざけんなよ」

「ふざけてないぞ? 俺は率直に思ったことを言ったまでだ」

 宏樹が胸の前で両腕を組み、踏ん反り返ったところへ追加のビールが運ばれてきた。

「とにかく飲め飲め」

 半ば強引に押し進められる形でビールを注がれる。
 それに朋也が口を付けたところで、宏樹はおもむろに続けた。

「さっきも言ったけど、俺は男だし女性の気持ちの全ては分からんから想像で言うけどな。――彼女、恐らくお前から他の女性の話なんて聴きたくなかったんじゃないか?」

「どうして?」

「どうして、って……。それぐらい察しろ」

「俺は鈍感なんだ。それぐらい知ってんだろ?」

「そうやって開き直るのがお前の悪いトコだ」

 宏樹は片肘を着き、もう片方の人差し指でテーブルを叩いた。