「次は俺に寄越せ」

 そう言いながら、今度は宏樹からビール瓶を分捕った。
 同じように注ぎ、互いのコップにビールが満たされてから、どちらからともなく軽くコップをぶつけ合った。

 乾いた喉にビールの苦みが染み渡る。
 あっという間に一杯目を飲みきり、宏樹が素早く瓶を手にして新たに注いでくる。

「不思議だな」

 ゆったりとしたペースでビールを飲みながら、宏樹が不意に口を開く。

 朋也はコップを握り締めたままで、「なにが?」と問い返した。

「お前と一緒に酒を飲んでることがだよ」

 宏樹は口元に弧を描きながら続けた。

「俺とお前は十歳離れてるからな。お前が小学校の間に俺が成人して、酒を飲むようになったら、散々嫌味を言われたこともあった。それがいつの間にか、お前も大人になってしまったから。俺もトシを取るはずだな……」

「なに急に年寄りくせえこと言ってんだよ……」

 朋也は苦笑いしながら箸を持ち、お通しの肉じゃがに手を付けた。

「兄貴はまだ三十ちょいじゃねえか。ジジイになるにはまだ早過ぎるし」

「三十過ぎたらあっという間だぞ?」

「なんの脅しだよ、それ?」

「別に脅しちゃいない。事実だ」

「偉そうに言うほどのことじゃねえだろ……」

 朋也は一口サイズに裁断したジャガイモを咀嚼してから、それをビールで流し込んだ。