◆◇◆◇
実家に戻り、宏樹は車を、朋也は荷物を自室に置いてからすぐに家を出た。
予想通り、母親には、「もうちょっと落ち着けないの?」とぼやかれたが、兄弟揃って聴いていないふりを装った。
ふたりが向かった先は、徒歩十分ほどの場所にある焼き鳥屋。
朋也が家を出て間もなく出来た店らしい。
焼き鳥屋だけあって、店の中は煙が充満している。
換気扇は回しているようだが、あまり意味をなしていない。
とはいえ、煙たさもまたその店の味だと思えばさほど気にならない。
朋也と宏樹は一番奥のテーブル席に着いた。カウンター席も決して悪くないが、宏樹なりに気を遣ってくれたのかもしれない。
確かに、カウンター席だと密談するには不向きだ。
それを考えると、奥の席が空いていたのは幸運だった。
密談と呼ぶには大袈裟かもしれないが。
「まずはビールでいいよな?」
宏樹に訊かれ、朋也は「ああ」と頷く。
それを見届けてから、宏樹が店の従業員を呼び、瓶ビールと焼き鳥をお任せで注文した。
ほとんど待つことなく、ビールは運ばれてきた。
一緒にお通しもそれぞれの前に置かれる。
従業員が離れてから、宏樹がビール瓶を持ち上げる。
そして、注ぎ口を朋也に無言で向けてきた。
朋也は少し慌ててコップを手に取った。
わずかに傾けて差し出すと、琥珀色の液体がコップの中にゆっくりと注がれてゆく。
実家に戻り、宏樹は車を、朋也は荷物を自室に置いてからすぐに家を出た。
予想通り、母親には、「もうちょっと落ち着けないの?」とぼやかれたが、兄弟揃って聴いていないふりを装った。
ふたりが向かった先は、徒歩十分ほどの場所にある焼き鳥屋。
朋也が家を出て間もなく出来た店らしい。
焼き鳥屋だけあって、店の中は煙が充満している。
換気扇は回しているようだが、あまり意味をなしていない。
とはいえ、煙たさもまたその店の味だと思えばさほど気にならない。
朋也と宏樹は一番奥のテーブル席に着いた。カウンター席も決して悪くないが、宏樹なりに気を遣ってくれたのかもしれない。
確かに、カウンター席だと密談するには不向きだ。
それを考えると、奥の席が空いていたのは幸運だった。
密談と呼ぶには大袈裟かもしれないが。
「まずはビールでいいよな?」
宏樹に訊かれ、朋也は「ああ」と頷く。
それを見届けてから、宏樹が店の従業員を呼び、瓶ビールと焼き鳥をお任せで注文した。
ほとんど待つことなく、ビールは運ばれてきた。
一緒にお通しもそれぞれの前に置かれる。
従業員が離れてから、宏樹がビール瓶を持ち上げる。
そして、注ぎ口を朋也に無言で向けてきた。
朋也は少し慌ててコップを手に取った。
わずかに傾けて差し出すと、琥珀色の液体がコップの中にゆっくりと注がれてゆく。