「しっかしまあ、青臭いガキのまんまだと思ってたのに、とうとう合コンに参加するまでになったか。いや、兄ちゃんとしてはもちろん嬉しいぞ?」

「――茶化してんじゃねえよ……」

「茶化してないさ。お前が合コンの場でどんな話をしたのかを想像するのは面白いけどな」

「――だから面白いとか言うな。別に普通にしてたし……」

「そうか、普通か」

 そこで会話が途切れた。
 お互い、話すことがなくなり、車の中はエンジンと微かに流れるラジオの音だけが細々と聴こえる。

 宏樹と話しながら、ふと、涼香のことが頭を過ぎった。
 一緒に飲みに行った帰り、急に朋也から逃げるように駆け出してしまった涼香。
 あれからずっと、気になってはいたものの、やはり、どうして涼香を追いつめてしまったのかの理由が分からずにいる。

 涼香は男顔負けな豪快さがある。しかし、半面で非常に脆い。
 それは何となくでも察した。
 それと比較すると、一見弱そうな紫織の方が、精神的には強い。

(そういや、兄貴に相談する気だったんだよな、俺)

 今さらのように気付いた。
 だが、相談するにしても、どう話を切り出して良いものか。
 もちろん、車の中で話す気はない。家に帰り、夕飯を済ませてからゆっくりと話すつもりだ。