(今はちょうどご飯時かな? もしかしたら、彼と一緒かもね)

 紫織が大好きな〈彼〉と過ごしている姿を想像し、無意識に口元が綻ぶ。
 紫織は高校卒業と同時に長い長い片想いを実らせ、今、幸せの絶頂にいる。
 まだ、本当のゴールインまでには至っていないが。

(けど、いつ結婚してもおかしくないよね)

 一杯目のビールを飲みきった時、涼香の前にビール瓶の先が突き出されてきた。

「次頼むから飲んじゃって」

 夕純に半ば強引に促され、涼香は「どうも」と軽く会釈してお酌してもらった。
 だが、さすがに中身を空には出来ず、中途半端な状態で瓶の中にビールが残った。

「酔っ払った?」

 唐突に訊かれ、涼香はコップを口に付けた状態のままで夕純に視線を注いだ。

 夕純はビール瓶をテーブルに置くと、頬杖を突いて涼香をジッと見据える。

「さっきから、表情がコロコロ変わってたから。怖い顔してたかと思ったら、急にニヤッとしたり」

「――そんなに変わってました、私……?」

「うん。まあ、こっちは見てて面白かったけどね」

 夕純はケラケラ笑いながら、残ったビールを自分のコップに最後の一滴まで入れた。

「山辺さんって不思議よね。いや、私も周りからはそう思われてるけど。でも、だからかな? 山辺さんから私と同じ空気を感じる」

「唐沢さんと、私が、ですか……?」

「もしかして、私と似てるってイヤだった?」

「あ、いえ……」

 口籠った涼香に、夕純は「いいのいいの!」とさらに笑い声を上げながら続けた。